Mercedes CLR

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GT1レースが事実上のプロトタイプカーレースと化していた1990年代後半、

レース用プロトタイプ車両で争われるLMPクラスが立ち上げられることになり、

初年度となる1998年にはポルシェは911-GT1'98を、メルセデスはCLK-LMを、

トヨタはGT-Oneを、日産はR390をそれぞれ投入した。

 

そして1999年、メルセデスは「あの悲劇」を再現させるかのような車を、

ル・マン24時間耐久に投入したのであった。

 

1999年に製作された「CLR」は、1990年代後半に投入された「CLK-GTR」や、

その発展形となる「CLK-LM」からメカニズムを受け継いだレーシングカーで、

極限までダウンフォースを追求した空力設計を採用したが、その設計自体に問題があった。

 

これまでの車両とは一転して、車体開発は風洞実験など行われないまま進められたため、

極端な低車高となってしまい、レーススピード段階では車両が浮き上がるのではないかという

懸念がされた。

 

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その懸念は早速的中した。極限までダウンフォースを追求した設計が仇となり、

練習走行中に道路から浮き上がってクラッシュするという事態が発生した。

 

しかし、根本的な対策も採られないまま本戦に出走、結局同じようなクラッシュを繰り返し、

チームは残っていた車両を速攻でピットに戻し撤収、ル・マンから再び撤退した。


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このクラッシュを境に、プロトタイプ車両の空力設計が見直されることとなった。

これまで着目されなかった「ホイールハウス内に入り込む空気」という概念が導入され、

「吸引された空気を車輪後部に放出する」仕組みに改められた。